カラー診断やイメージ診断の落とし穴
今回の長浜の茶会では、きもの英の訪問着を着用いたしました。
今年の夏前に仕立てたものです。
英はポリエステルですが、一枚一枚丁寧に職人が地染をし、伝統工芸士の方が手書きで文様を付けて下さっております。
また仕立てが上手く(仕立てを見学させてもらったことがございますが、素晴らしかったです)本当に正絹以上の仕上がりといつも感心しております。
汚れを気にせず着用できる訪問着は何かと重宝致します。
さて、表題の事について少し長くなりますがお付き合いくださいませ。
今までに何人の方にカラー診断やイメージ診断をしてまいりましたのかと考えますと、1000人以上になるのではないでしょうか。
最初はグループ診断が多く、2時間に10人ほどの方を見てまいりました。
一時期、診断して差し上げた方や、昔の生徒さんなどにお会いしますと、私がお教えしたそのままのイメージの方と、何も変わってないない方とに分かれます。または私が診断いたしましたイメージと真逆の雰囲気になっている方もいらっしゃいました。
その時少し悩みまして出た答えがこれです。
「似合うイメージを教えて差し上げても、心が納得しなければやがてまた違う方向へと行ってしまう」
人は生まれながらにして持ってくる個性はなく、様々な生活環境の中で個性というものが形成されて行きます。
それは親子関係でしたり、兄弟との姉妹との関係、学校の友人や先生、就職先、趣味嗜好品など。
それと関係なく、顔の形や体の形、髪の色や肌の色はある程度の素地を持って産まれてまいります。
着物が似合わないスポーツ体型の方が、女らしいはんなりとしたキモノが好きであったり、かわいらしいお顔立ちのお嬢さまがクールで格好良いキモノスタイルに憧れたり。
おとなしいエレガントな雰囲気の方が、はじけた主張の強い個性を出したがっていたり。
見た目のイメージと心に持つなりたいイメージは違ったりすることが多くございました。
そしてその心のもつイメージを優先してあげなければいけないという事に気づき始めましたのはここ数年のことでございます。
和のパーソナルカラーの指針として、決して診断士の好みを押し付けない。
お客様の話を十分聞いて、一緒にイメージを考えていく。
カリキュラム通りの診断で決めつけてはいけない。
そのようにお教えしています。
話はそれますが、今、癌の治療などは様々な選択肢があり、それは自分で決めれるものであり、医師の判断に全てを任せるわけではございません。
個々の生活スタイルや、考えによって自由に選べる時代になってまいりました。
100人いれば100通りの生き方があるように、イメージ診断を数種類の分類に分けて決めてしまうのは少し無理がある。
今の女性はその時のシーンによって、女らしくも、かわいらしくも、強い意志の顔も、母として持つ厳しさ優しさなど様々な顔をもって生きています。
そのどれもがその人らしくあるように導くのが正しい診断であると思うようになりました。
伝統色彩士協会の和のパーソナルカラーは、似合う色をお出ししますが、それが心に響かない色であったり、子供のころから苦手な色であった場合は、その色から枝を伸ばし、範囲を広げ、ベスト1でなく、ベスト2か3の色のグループの中から気持ちと寄り添える色を探してまいります。
イメージも、かわいい、クール、はんなり、色っぽい、都会的などいくつかの中からお出ししますが、それは生まれ持ったお顔立ちのイメージであり、そういう自分を変えたいと思っている方には、どのように変えたら良いのかを、メイクや髪型などでご指導いたしております。
少し前でしたが、仕事でカラー診断致しましたお客様にきもののお見立てをしておりました。
何枚かお出しした反物を見て、あまり嬉しくない表情をなさったので、気になり、こういうものが一番お似合いなのですがお好きでないですか?と伺いました。
すると少しため息をつき「いつも、ずっとこんな風に可愛らしいイメージで決めつけられて、同じようなものばかり着てきたのだけど、私はもっと仕事のできるさっぱりした格好良い女性になりたいのです・・・。。」
それを聞いて、私はすぐに、じゃあやめましよう!!!今日から変わりましょう!!
大丈夫です、新しくつくります!
といって、彼女の右と左の顔を見て、ややクールな表情を持つ反対側の分け目に変え、前髪を斜めにおろし、口紅の色を変え、頬のラインを変え、着物を選択を変え、別の女性にして差し上げました。
その時の彼女の心からの明るく嬉しそうな表情を忘れることが出来ません。
本来の顔の作りであれば、かわいらしい童顔のお顔立ちで小柄ですので、なかなかクールスタイリッシュにもっていくのは難しいタイプです。
ですが、一番大切なのは心と外側が寄り添えるのか?という事です。
和のパーソナル診断でベストカラー・ベストイメージを知る事も大切ですが、それを分かった上で、でも私はこうなりたいというお気持ちを引き出すようにしております。
そして、無理のない自分らしさを一番大切にした着姿であってほしいと思っております。
そのためのサポート役が私たちの役目です。
私は何が似合うかわからないんです。という方でも、好きなイメージはあるはずです。
好きという事は心の思いです。
一番最初にカルテに書いていただきます項目には、その方の好きが分かるようになっております。
それを見ながら、好きを大切に、好きに近づけるように頭をひねります。
私はあの方がすきだけど、でも自分とは全然違うタイプだから・・・そんな風に諦めないでくださいませ。
好きや憧れは、ずっと思うと形になります。
そういう人を沢山知っております。
背は伸びませんし、鼻の形も、目の大きさも変えることはできませんが、若いころは肌の色が黒く、着物が全然似合わない顔の私でも、驚くことに晩年変化していき、着物に寄り添う顔になってまいりました。
思いは形になります。
30代40代の頃の診断士の私では経験が浅くそこまで深く読み取れませんでしたが、50歳になってわかることも沢山あります。
やはり経験こそ宝でございます。