叔母から繋ぐ紅花の色
私の生活に常に存在する紅花は叔母からのメッセージでもあります。
この歳になり、冷えというものがどれだけ体に影響を及ぼすのか、ひしひしと感じております。
血の巡りが悪い、冷え性などど軽く考えておりましたが、それらの先に様々な病気があるのだと最近特に思っております。
ホルモンバランスを整えたり、生理不順改善、更年期障害など、漢方としての紅花の効用は女性の婦人病に特化しております。
そして国産の紅(山形の最上紅)はとても高価で、私の小町紅は9000円ぐらいですが、ひと月持つか持たないか・・・。
普通の口紅でしたら、半年も一年も持ち、そのうち使わなくなってしまったりするものですが、今は本当に無駄がないように丁寧に最後まで使い切っております。
高価な最上紅花で染められた長襦袢は女性の憧れでありますが、その色はたいてい薄いさくら色。もしくは薄い黄色。
濃き色は色うつりの心配もあると思われ、今ではもうみなくなりました。
紅花の朱は、寒い冬に何度も何度も繰り返し染めなければ出ない色。
なんども染めればそれだけ染料を沢山必要といたします。
そして濃く染められた紅花染は紅絹(もみ)色と呼ばれ、平安貴族のみが使用でき、一般庶民には禁止された禁色(きんじき)でもあるのです。
これは正絹の肌襦袢でございます。
この紅花は天然ですので数回洗えば色落ちの心配はありません(合成の紅花は何回お洗濯しても色落ちいたします)
染色指導は草木染・特に紅花染では有名な染色作家の「大場きみ」のもので、山形の最上紅花で染めてあるという証書がついておりました。
肌襦袢に証書がついているとは、なんとも贅沢。
自宅で洗えるようにと大きめに仕立てられております。
この肌襦袢を着ていると、温かく、冬の寒さも乗り超えられます。
静電気も起きず、肌がしっとりとするようです。
肌の美しさは、やはりデザインよりも素材によるものが大きいと思います。
西洋の下着で締め付けられた体は若いときは美しくても、年齢を重ねると美しくは見えません。
艶のあるやわらかな絹と紅花の色はそういう姿を全部飲み込んでくれる肌着と言えましょう。
紅花は叔母の好きな色でした。
紅花は女性にとって大切な色なのよ・・・そんな風に言っていた記憶がございます。
水上勉の「紅花物語」は私が三つか四つの頃、主婦の友に連載された小説。
最後のページに書き込まれたメッセージに美しかったあの頃の叔母の姿が目に浮かびます。
1970年、7月20日軽井沢山荘にて読破。
夕暮、浅間山に陽も沈んで・・・・。
晩年、祖母も父も叔母も、管理の問題で別荘を手放しましたが、いつかまた私の時代で軽井沢の山荘を取り戻せる日が来ると良いと思っております。