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江戸の和化粧~紅

2018年1月25日 15:26  日々の暮らし 

前回は眉やアイメイク墨などをご紹介いたしました。今回は紅についてでございます。


私は東京モード学園という学校で、和のメイクを教えさせて頂いた時期があります。


当時はいつでも着物を着ている先生として、ずいぶん生徒さん達から珍しがられました。



本来洋服と着物とでは、メイクの理論が違ってまいりますので、それを化粧の歴史などと共に実技と講義でお教えしてきました。


凹凸のあるお顔に仕上げるには、色のグラデーションを考え、何色も使います。

和化粧は凹凸よりも線を大事にいたしますので、とてもシンプルです。

色は、白・黒・赤の3色だけで構成されます。



私が普段つけている紅はもちろん紅花でございます。

普通の口紅より高価ですが、冬になって唇の皮がむけたり、乾燥することもなく、いつも唇がしっとりしているのはこの紅花のエキスのおかげと思っております。


紅花には油分がありませんので、上に三善のリップグロスを塗っております。(入れ物がレトロでかわいいのです)



着物姿で口が大きいのはあまりよろしくありません。(洋服の時は大きい方が様になったりしますが)


口の広きは殊に目立つもの也。これに常のごとく紅をさし、あるいは濃く紅を付くれば口益(くちいよいよ)大きく、諺(ことわざ)に言う人を喰いたる口もとのごときとてはなはだ見苦しく、賤しく(いやしく)見ゆるものなり。

都風俗化粧伝


江戸時代花魁や遊女などは濃く紅をさしますが、普通のお嬢さんは薄い方が好まれました。

口の大きい方は薄く、小さい方はやや濃くつけるのがよろしいです。


また紅を濃くつけると顔が硬く見え、少し淡きが顔だちがやわらかく見えおとなしく愛嬌あるなりと書かれています。



紅花は私が好きな染色の一つでして、教室でも沢山の方に体験していただきました。



 私が染めた紅花の帯揚げやストールです。


紅花は婦人科系の漢方にもよく使われますので、日頃お茶としても飲んでおります。(紅花茶として伊勢半本店・紅ミュージアムに置いてございます)

血の巡りが良くなり、冷え性にとても良いのです。



先日紅のリフィルを買いに伊勢半本店(紅ミュージアム)さんに伺いましたら、寒中丑紅を頂きました。

江戸時代、寒の時期に作られた紅は冷たく澄んだ水で作られるため良質で発色が良く、唇の荒れを防ぐ薬効も高いとされておりました。

紅花染も寒い時期の方が良く染まると言われています。

寒中の丑の日に「寒中丑紅」という名目で売り出しをかけると、早朝から列をなすほどの人気だったそうです。

その時景品として配られたのがこの「寒中丑紅」です。

この牛を小座布団にのせ、神棚に供えて拝むとその一年は着る物に不自由しないという風説が立ち、人気を集めましたそうです。


今年も充実した着物生活ができますようお願いしてございます(笑)


御利益があるとよいのですが・・・・。


ではまた。


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