綿薩摩絣
2017年1月8日 22:32
草花の色
着物好きの最後に行きつくところが綿薩摩と言われています。
薩摩絣の本当のすごさを理解したのは、自分で織を始めてからです。
殆どの皆さんに大島ですか?と聞かれますが、これは木綿の絣です。
綿織物の最高峰といわれ、市場にもわずかしか出回っていません。
木綿であるのに絹を追い越す艶、体に沿う柔らかさがあります。
ごくごく細い糸を使い、ベテランでも一年かかって仕上げると言われています。
滑りが悪く切れやすい木綿の糸を使い、大島紬と同じ工程で織るには、相当な技術が必要だったと思います。
これは祖母のもので古い薩摩絣です。
もともとは、江戸時代、薩摩藩主の島津義久が幕府に献上したのが始まりと言われています。
上流階級の木綿着物と言われ格式は高く、明治に流行します。
戦後は殆と織られることはなく、いまでは確か東郷織物さんだけが、復興させその流れを継いでいると思います。
3世代着れると言われる薩摩絣ですが、その言葉は正しいようです。
洗い張りを何回してもなお、艶がまし、しなやかになっていきます。
正絹の裏を付けて、袷で仕立ててあります。
思えば私はもう何年何年も同じ着物をきて、歳をとり、これからもそれをくりかえしていくのだと。
洋服でそんなに長く着たものは一枚もありません。
毎年同じものを着ても、そのたびに喜びが沸き上がるのは、織り手の思いや、祖母の顔や、縫ってくださった和裁士さんの気づかいや、様々な人が関わって今日までつながってきた布だからなんでしょうね。
温かく、優しい肌ざわりのこの綿薩摩は、身にまとうたびに祖母の愛情にあふれた笑顔を思い出します。
さて、今朝は帯締めを悩みました。
小物の色を悩むのが楽しみの一つです。