時間がたって似合うもの
若いときには着こなせなかったものが、今になって似合うようになると嬉しいです。
先日の武者小路千家東京でのお初釜の際、10年ぶりぐらいにお下がりの道行コートを着ました。
頂いた時に1回しか着ていなくて、そのまま箪笥の奥深くに潜り込んでいましたが、そろそろどうかしら?と出してみました。
藤色に灰が入った割と地味な色目がベースなので、
着ると意外に老ける気がして、あまり好きではありませんでした。
雲枠を銀駒刺繍で縁取りしてあり、花なども刺繍が施されているので、華やかでフォーマル向きの道行です。
今回は、お家元の古希の祝いの帯が映えるようにと落ち着いた色無地にしたので、コートは少々華やかな方が良いかしらと思い、久しぶりの着用です。
色無地は祖母のもので洗い張りをして仕立て直しました。
袖丈がどうしても足りず、長襦袢の方が少々長めになりますが、出てくることもないのであまり気にせず着用しています。
祖母と叔母の色無地は沢山あり、どれも昔の絹のぞろっとした落ち感が好きで、気に入っています。
きものを購入するときに、質感よりも文様や色彩に目が行くのは仕方がありません。
色が好き、柄がかわいい、そういう事から着物に興味を持ってもらえるのはとても嬉しいことです。
ですが、一流のスーツが生地の良し悪しで格が変わるように、大人になると質感が年齢にあっているかどうかも気になるところです。
目立って主張することではありませんが、上質な絹は色彩も嫌味のない落ち着いた光沢を放ち、軽く、暖かく、優しい絹ずれの音がします。
時々、派手なきものでなくとも、圧倒的な品の良さで凛としたお姿のご婦人をおみかけしますが、体の動きに沿う絹のドレープ感から、質感の良いキモノだわ~と感心することがあります。
そういうさりげない所に自分なりの品格を表現できる女性になりたいです。
利休バッグは4年前ぐらいに銀座のかわのやさんで購入した古布のもの。
数寄屋袋は更紗の古布で仕立てたものです。
初釜では、必ず何か新しいものを一つおろしますが、今年は草履を。
私は江戸草履派ですので、幅も細身で鼻緒も細くしています。
若い頃、私の足袋の大きさでは、良いところにお嫁にいけないと祖母が嘆いていて、
せめて足がすっきり見えるよう、草履は細身にするよう言われてきました。(中国の纏足ですか??と言いたくなりますが)
ですので、24㎝ですが(現代では特別大きいと思いませんが・・・(-"-))足袋もきつめの細目を履きます。
ちなみに江戸時代は手の小さいことが美人の条件だったようですが・・。
お稽古の時はつらいのでストレッチを履いています。
結局、祖母のきものや叔母のコートや、言いつけ通りの草履や足袋をはいて、私というものは一体どこに??と思うのですが、
祖母が亡くなって何十年経っても、こうやってぶつくさやり取りできるのも幸せなことです。