正絹単衣を洗う・きものを身近に
普段の正絹長襦袢を洗うことまでは抵抗ないのですが、単衣の紬を洗うのは少々不安でもありました。
サイズ直しをしなければならない手織りの琉球絣。直さずそのまま着ていましたが、なぜかこれを洗ってみようと思いました。
最近機織りをやっていて、思うところがあるのです・・。
手紡ぎ、草木染、手織りが大好きで、着物は自然と一体になれる素晴らしい着衣という世界観を愛しているのに、なぜか洗えない。
洗う時は石油系の溶剤でもにょもにょするしかない・・・。
普段の下着や着る物の殆どを合成でなく自然の洗剤で洗っているのに、きものだけ石油系・・・。
この問題は小さくずっと私の胸でくすぶって来ました。。
私は着物の何が好きなのか?という問いかけを再度して出た答えは・・・。
「完全自己満足。目立つものより、さりげなくいいもの。職人の息使いが感じられる染や織。農業という立場から見た糸から反物になるまでの過程が好き。」
ターシャテュ―ダーの美しい庭園で着るビンテージのようなコットンのワンピース姿と、日本の田園風景で着る手織りの紬は、私にとって全く同じ世界なのです。
そこに合成や石油という単語はないのです。
とうことで、少し汚れたこの紬を洗うことに。
洗剤はエマールか?専用のものか?でなく、そもそも洗剤の合成成分が嫌いなので、いつも使うシャンプーで。
石油系界面活性剤・パラペン・シリコン・香料・何も入っていないこのシャンプーが一番安全。
洗面台に30度のお湯をはり、シャンプーを小さじ1ぐらい。
ざぶんとつけたら、え~~???何??・・・この臭い!!!
ぎゃーー!!という娘の雄たけびと共に、家中の窓をあけとにかく換気!換気!
マスクと手袋とゴーグル用意!!
しかし、時すでに遅し(泣)
私は気分が悪くなり洗面所にへたり込んでしまいました・・・。
化学薬品の強い臭いに慣れていないのか(友人はお風呂のカビ取りの化学薬品の臭いに強く、全然平気だそうです。)
少し休憩して、水をみると妙な色・・・・。
藍染の色がおちるのかと思いきや、そうではなく菜種油のいろの水。濁っている汚い水でなく、透明で透き通った油色・・・。
なんだろう・・・。汚れというより薬品の色でした。
もう深く考えず、とにかくやさしく押しあらい。
水を何度もとりかえ、臭いと色が出なくなるまでがんばりました。
息が出来なかったでしょう・・紬さんごめんね・・ってなぜか謝る気持ちに(泣)
バスタオルに包んで水をきり、1分脱水して着物ハンガーに干しました。
洗う前に採寸しておいたので、まあ縮むのは覚悟してます(笑)
ただ、最近読んだ本で、紬の単衣は2%ぐらいの縮率だとかいてあったので、もしかしたらうまくいくかしら~と淡い期待まんまんでした。
半乾きのところで、当て布でアイロンをかけます。
さてさてどのくらい縮んだかな。
結果は、裄丈±0 袖丈±0 身丈-2㎝
え??そんなもの?
あらら~~~(笑)
で、紬はなんともさっぱりと、美しくよみがえっています。
様々な薬品が抜けて、糸本来の美しさと織が際立っているようです。
頬ずりしたくなるような優しい着物になりました。
これで100%私のきものになったわ!という満足感です。
着物って毎日のように着ているけど、身近なのに遠かった。
例えば、自分の子供なのに全部把握できないもどかしさみたいな・・。
私の自由には出来ないもの。
シミを付けたら大変、よごしたら大変、すぐ悉皆やさんに!
素人は手を出しちゃダメ!
専門家に!
自分のものなのに、へたにいじると怒られる。
おかしいな~って思ってました。
もちろん、フォーマルや、袷や、刺繍のものや、そういうのは怖くて洗えないけど、でもこれからは自分で手に負える着物を増やしていこう。
手に負えないものは少しづつ手放そう。
今度、最初から洗えるように仕立ててくれる和裁士さんと会うのでそれも楽しみです。