キモノのこと

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着物と茶道

2017年7月14日 12:24  

先日、ちょっとしたことがありましたので、、覚書として残しておきます。


お茶の稽古には、恵比寿と千駄木の2か所にかよっております。

千駄木は武者小路千家お家元の東京での稽古場になり、恵比寿は両忘会・有吉先生のご自宅です。

有吉先生は、千駄木と恵比寿の両方でクラスをお持ちなので、私は2か所に通っているという訳です。


千駄木の稽古場は坂の上にあるので、真夏の暑い日、きもので上るのはとても難儀なことです。

体調の良し悪しで、時折駅からタクシーを使っていくこともあります。


先日もつい暑さに負けてタクシーに乗ったのですが、その時とても腑に落ちる出来事がありました。


「暑くてお着物たいへんですね・・・」

ドライバーの方にそういわれたので、私は「お茶の稽古だから仕方ありませんけど、つらいです。今日みたいな湿気の多い蒸す日は特に・・」

そんな風によくある平凡な返答をしました。


その方は私の言葉を聞いて少しの間があり、信号で止まると、このように言われました。


「それは仕方ない事です。お茶をやられているなら、きものは稽古のうち、修業のうち、弱音を吐くならお家元のお稽古場に足を踏み入れてはいけないですよ・・・」


「洋服の所作ときものの所作は違います。気軽に学ぶ茶道と、お家元の場所で学ぶ茶道とは別物です」


この方は、私が向かう目的地がお家元の稽古場であることを知っている。

なおかつご自身でもお茶をやられているのだとわかりました。


人間は楽な方に、気軽で楽しくて簡単ですぐ結果の出ることに流され、価値観が崩れ、

自分を律することが出来ないとあっという間に堕落してしまう。

小手先の上手さだけを競い、肝心な精神性を失っていく。


これがたった5分足らずの車の中で私が学んだ、意味のある出来事でした。


私はいつもどこか自信がないのです。

そこが浅い人間になりたくないと、もがいて勉強して、自分に失望しています。



20年前、夜泣きをする娘を背中におぶい、やがて新聞配達のバイクの音が聞こえテレビをつけると、「朝の茶事」という番組が放送されていました。


孤独な育児の中で、堀内先生の静かで優しい点前が何よりの癒しの時間でした。

亡くなった祖父がそこにいるようで、穏やかな気持ちになりました。

子育てがひと段落したら、もう一度しっかりとお茶と向き合おう。


あれから20年。


素晴らしい先生と、心の通う社中と出会い、恵まれた環境でお茶を学べることに感謝して。

気持をあらたに、お茶に向き合いたいと思った一日でした。


武者小路千家・千駄木稽古場にある「半床庵」

東京都の指定有形文化財に指定されています。



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