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秋の色・臭木

2022年10月30日 11:45  草花の色 



田舎の友人に頼んで臭木(クサギ)の実を送ってもらいました。

収穫は意外と大変な作業なのをよくわかっているだけに、一粒も残さずに色を頂かなくてはと思います。

薄い水色は藍染でも染めることができますが、瓶覗などの淡い水色は力のなくなった藍甕から得られる難しい色で、むしろ藍の生葉で染める方が簡単に薄い色を得ることができます。


クサギの実は唯一藍以外で青が染まる染料です。

熟した実と青くなりかけの実とでは染まる色が違うので、その時その時送っていただいた実の状態により、少しづつ違う色を楽しむものとなります。

私の工房では、今は長襦袢を染めていますが少し時間がかかり中干しの状態ですので、合間合間に季節の植物で小さなものを染めるのは楽しみでもあります。


冷凍で保存しておいたので解凍されないと硬くて潰せんません。

ですので最初の1液は潰さずに煮出し、2液はすりこぎ棒で叩いて潰してから煮出しています。





このぐらいの色が出たら綺麗な色に染まります。

染料が布に入り込むと、残りの液は力なく薄くなります。






いつも思います。

何故なんだろう。

何故こんなに美しい色が染まるのだろう。


そこに神経が集中すると、自分を取り巻く全てのものが色褪せて見えます。

真実がどこにもないような世の中で、私にとって色だけが確かなものだと思うのです。







小田原の山の中で得たクサギの美しい色の世界がこれでまた長く保存できます。



道明の帯締め・湊鼠(淡い藍色の鼠が入る色)に合わせて。



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