いろのこと

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見かけではわからない

2022年7月13日 11:47  草花の色 

染めの師匠と久しぶりにじっくりと話しをしました。

話しをしていく中で、私が今まで長く悩んできた事についての回答が得られたような気がして貴重な時間であったと思います。

と同時に、理想論と現実との間で結局は何も解決できてない気持ちにもなっています。

今は瞬時に結果が出る事。

あっという間に興味深い体験ができる事。

動画でも、若い人達には1分でも長いと思う時代です。

資格もできれば1日で取得したいでしょうし、勉強はネットだけでも十分で、取得までの過程より資格取得後に自分で何をやっていくかの方が重要でもあるのでしょう。


染めも同じで、限られた時間の中で染めの体験ができる事で完結していて、色にまつわる様々な知識は必要である人と、ない人に分かれると思います。


生徒にも簡単で面白いと思うようなカリキュラムを組む事が最優先で、本来自分が伝えたいと思っていることは殆ど省いています。

(私は授業で無駄話が多いのですが、実はその中に大事な事が含まれていたりします。しかし今は時間の都合上なるべく余計な話はしない方向で授業を進めています)


伝統を伝えることのみに集中してしまえば、それは自己満足にしか過ぎないのではないだろうか。

商業的な部分で人を集めるためのプロモーションやマーケティングを無視しては仕事は成り立たない。

この狭間でいつも悩んでしまいます。


この10年生徒たちはブログを読んで来てくれた人が殆どでした。

最近はインスタを見る人が多くなったので、instagramに主に投稿しています。

yukinoyoshida917


ブログはインスタでは伝えられない事を書いています。

読んでも読まれなくても、大切な事を残して行きたいと思っています。



写真は、先日の染色クラスで染めた藍の生葉です。

昨年までは和光の民家園で栽培した藍を主に使用していましたが、今年は民家園の藍が使えなくなってしまったので、私の畑のものだけで染めをしました。


私の畑は自然農法ですので、雑草もあまり抜かず、農薬なども一切使っていません。

それでも一年を通して豊富な農作物がとれています。


種は、徳島のものです。

今年はなかなか力強い葉には育たず、染料として使えるまで育つかどうか毎日心配していました。

とは言え、雨の降らない暑さの続く日にも、風の強い日にも倒れる事なくヒョロヒョロと伸びているので、それなりに頑張って成長しているのだと、微笑ましくもありました。

染色当日の朝に刈り取り、袋に詰めるも心許ない弱さは変わらず、万が一染まらないことも考えて、染料屋のハイドロを使う天然藍の濃縮液も用意しました。



ところが実際にこの弱い生葉をミキサーで砕いて色を出していくと、今までで一番美しい色が出たのです。


諦めかけていた弱く薄い葉から、何故こんなに強い色が・・・・。


参加してくださった生徒さんが、この色を見れた事でまたしばらく頑張れます!!

先生ありがとうございました。

そういって喜んでくださって、はたと気がつきました。


今回は見かけで判断した私の間違いであったのだと。


人も植物も、見かけではわからないのです。

真実は表面的なところにはないのです。

真実は奥の方に潜んでいるのです。


ネット社会の今、本当のことを知り得るにはアクションを起こして、自分が関わり、その中で理解して行かねばならいと思っています。

誰かの評価や言葉、見えるものだけに惑わされず、自分の体験のみを信じる事。


それをどうか皆さんに忘れずにいて欲しいと願っています。


そして、浅く学べば色は通り過ぎてしまうものです。

深く学ぶと、その色から何かしら得るものがあるはずです。


学びとは自分自身が目の前の事をどう解釈するかを導くためのものでもあるのです。


スクールやイベントのお知らせは

伝統色彩士協会オフィシャルサイトまで


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