梅雨寒の絽ちりめん・江戸小紋
2022年6月10日 11:35
絹
5月に入ると急に暑い日が続いたりするので、単衣は5月解禁という話題が毎年必ず出ます。
もうお約束のような話です。
しかし、なぜか6月に入ると寒いと感じる日などもあり、むしろ袷を着たいと思ったりもするのです。
6月の寒さは「梅雨寒」といい肌寒い雨の日が続きます。
そんな不安定な時期に重宝するのが絽ちりめんの江戸小紋・松葉文様です。
シャリっとしたしぼの絽織にちりめんのとろみが入った落ち感のあるエレガントな着物です。
絽ではありますが、真夏には着ることはないとされているものです。
(現在は真夏でも着ましょうという考え方に変わっているようです)
絽ちりめんのとろみ感は、鬱陶しい梅雨の時期を楽しいものにさせてくれます。
コロナ禍では洗える天然素材として木綿の着物を多く着用しましたが、体に沿うエレガントさを考えると、絽ちりめんはやはり素晴らしいと思います。
合わせた帯は、草木染の生絹。
すずしと読みます。
精錬していないので張りがありますが、とても薄く軽く涼しい帯です。
茶屋辻文様は江戸時代中期以降に公家の婦人、御殿女中の夏の正装用の柄と言われています。
もともとは麻地に藍一色で書かれているものでしたが、やがて絹の着物の意匠にも用いられるようになります。
私の帯も藍一色で書かれています。
この茶屋辻の後期に見られる風景文様が御所解文様となります。
一見地味ではありますが、前に出る美しさより静かな気品があり、若い時ではなかなか着こなせなかった組み合わせです。
着物生活をしていると、梅雨は女らしさが増す時期です。
しっとりとした空気は肌の乾燥を防ぎ、目の乾燥もありません。
真夏になると外出が厳しくなりますが、今の時期は日本の景色もみずみずしく美しいのです。