「江戸美人の秘法」都風俗化粧伝
染色の感覚だと江戸はちょっと前の事でまだまだ新しい。これが師匠のいつも言っている言葉でした。
表参道にある伊勢半本店「紅ミュージアム」で毎年色の講演をさせて頂いています。
私のライフワークであり、募集と共にすぐ満席になる人気講座となっています。
伊勢半本店は文正8年(1825)江戸日本橋に創業した紅屋です。江戸時代の紅は紅花から作られます。
私は今でも江戸時代から同じ製法で作られている伊勢半の紅を愛用しています。
ところで毎年こちらのミュージアムで講演をさせて頂いているうちに「都風俗化粧伝」を最初の頃より深く何度も読むようになりました。
東京モード学園の講師時代や伝統色彩士協会の講座でも和装のメイクを教えて来ましたし、京都のよーじやさんと一緒にメイクの講演も何回かやっています。
「都風俗化粧伝」はそういうレベルの内容ではなく、中世の魔女にも通じる驚くような秘密の美容法が沢山書かれております。
むずかしい調合もあるのですが、お香の「香司」の資格もあり、香原料の事や漢方の事も少しわかるので、理解はできます。
私はファンデーションは使いません。なのでいつも皆さんに驚かれます。
髪はしっかりとこしがあり、量が多いので、普段アップにするときにすき毛を入れません。
本当はきものが似合う顔ではありません。
目と鼻が大きく、犬の狆にも似ています。
小学生の頃のあだ名は出目金でした(笑)
この化粧伝を実践して、少しづつ着物に似合う顔に改良してきました。
「そもそも同じ天地の間に生を得て、少しの風土は変わりありとも、都会の地に限りて美人を生ざしめ給わい、いなかなりとて醜女を生ましめ給うにあらず。都会の地の婦人は、その顔に応ずる化粧を施し、身格好に合う衣類を着するがゆえに、醜き女も美質(うつくしく)見ゆるもの也。またいなかの婦人は生質(むまれつき)容色妖艶とも、紅粉の化粧悪しくして、そのかおに応ぜず。衣類に奇羅を飾り、数百金を費やしたりとも、模様・地色の好み、その人に合わず、衣類の着様揃わず、身の動静のつきづきしがゆえ、あたら美質も醜く見ゆるものなれば、紅粉の仮粧、身の動静の巧手、不巧手によるがゆえなり。」
都風俗化粧伝・全書より抜粋
今は都会も田舎も情報に変わりはありませんが、ようはどんなに生まれつき美人であっても化粧や着物の趣味、所作などによって美しく見えないことがある。いくらお金をかけてもその人に似合っていなければ意味がない。
しかしどんなに醜くとも、化粧や色や模様の趣味を磨き、所作を美しくすれば美人に見えるのだと。
着物に対してコンプレックスが沢山あった昔の私にはとても心に響く言葉でした。
この本は1982年に高橋雅夫氏の校注で出版されています。
私の手元にある本は2008年のものです。
初版は1813年なので200年以上たった今も発行されているのですから、その内容がいかに古くなく今読んでも興味深いものであるかがわかります。
この本の通りに生活してみますと、とても肌が綺麗になるだけでなく、もしかしたら本の通りに、どんどん若くなっていけるのでは?と思ったりします(苦笑)
長くなったので次は実際に何をどう使ったらよいかを順にご紹介します。