伊兵衛織の着物と茶道
先日は伊兵衛織のきものでお稽古へ行ってまいりました。
「伊兵衛織」は静岡県浜松市旧高林家で織られていたもので、高林家当主の屋号から付けられました。
先代の伊兵衛は柳宗悦と一緒に民藝運動に参加しており、現在駒場にあります日本民芸館はもともと高林家の敷地内にあったのでございます。
茶人などどの接点も多く、「千利休以来の大茶人」と言われた益田鈍翁と長い友情を育くんだことにより、この織物は茶道や民藝の「用の美」の姿を表しております。
伊兵衛織は「玉繭」を手作業で紡ぐのですが「玉繭」とは2匹の蚕が一つの繭を作ったものを言いまして、通常の絹の4倍の太さにもなります。これを遠州木綿などを織る手織機で織ります。
現在はこの「玉繭」が入手出来なくなり工房を閉じてしまわれましたので、新しく織られる事はもうございません。
「樋口可南子のきものまわり」で伊兵衛織を知りました。
とても憧れておりましたが、私は同じ流れをくむ「ざざんざ織」しか持っておらず、今回銀座の灯屋さんからご連絡を頂いてご縁があったという訳です。
手持ちのざざんざは民藝が強く前に出ており、お茶の稽古にはなかなか難しい事と思っておりましたが、今回の伊兵衛は非常にすっきりとした色使いでしたので一目で気に入りました。
伊兵衛はお稽古で長時間正座していても全くしわにはなりません。丈夫で滑りが良いので、にじる動作もスムーズです。
もう少し柔らかくなって欲しいので、しばらくは日常生活でもなるべく着用いたしまして、体になじませていこうと思っております。
結城紬もそうですが、寝間着にして十分やわらかくしてから着ると丁度良いと言われてますので、寝間着とはいきませんが、部屋着としてしばらく着てみようかと。
この紬は光の加減で、老竹に見えたり、利休鼠にみえたりと、様々な表情を見せます。
老竹は「老い」という言葉から年寄りのイメージが強いのですが、年月を得て静かに伸びゆく竹林の姿がまさに老竹であり、それは華やぐ若い緑から渋味のある抑えた緑へと変化する静寂の色のようであります。
雛祭りの日でしたので、華やかな赤い帯に奈良の一刀彫の帯どめをしてみました。