江戸へ戻りましょう
久しぶりに結った日本髪でございますが、これはやや年増の形になります。
40~50代以降は、日本髪(丸髷)は高さを抑え小さく結わねばなりません。
また簪などは、柘植やべっ甲のくしを控えめに挿すぐらいがよろしいかと思います。
小さなサンゴなどの玉簪や銀の平簪も楽しいかもしれません。
あまり上に結い上げず、下目のふくらみにすることで、落ち着いた感じになります。
日本髪は当時の女性の職業によって様々な形がございます。
私の丸髷は、「雪乃髷」とでもいいますでしょうか、現代の女性でも通用するようにオリジナルで作っております。
伊右衛門の宮沢りえさんをイメージして・・・・。
大人の無理のない日本髪でございます。
ところで私は今の時代はあまり好きではありません。
人と人との関りや、仕事、文化、全てにおいて江戸時代に劣っていると考えております。
そして何よりも生きづらい・・。
人間が正しい成長をしておりません。
老後に2000万円必要と発表されてから、多くの人がざわざわしております。
それは貧乏になったら誰も助けてくれない世の中であるとわかっているからでございます。
江戸時代は長屋の皆が協力し合って貧乏な生活を工夫で乗り切ってまいりました。
貧乏であっても、志高く、希望があり、人情溢れる人々とのふれあいから生きる力が今の100倍はありました。
それはきっと日本が戦争に負けるまで続いたように思います。
日本が一番美しかった江戸の文化をきちんと残していきたい。
それには何ができるだろうか・・・いつもそう考えております。
先週のヘアメイクの講義では、日本の伝統色のメイクをほんの少しだけお教えいたしましたが、これはメイク講座とは言わず、基本は「化粧師」としての技術でございます。
伝統色彩士協会では、「着付け師」「化粧師」「伝統色彩師」の3つに分かれて考えております。
化粧師とは化粧を通してその人の悩みやコンプレックスなどども向き合わなければなりません。
着付け師も同じで、体型の悩みや、加齢の悩みに向き合って着付けを指導しなければなりません。
伝統色彩師は似合う色を通して、若さや美しさを取り戻し、華やいだ気持ちで日々を送ってほしいという願いがございます。
全ての基本はこの本の中から長年かけて学びました。
昨夜、生徒さんから「先生は何百年生きているのでしょうか?」とメールを頂きました。
あらためて考えますと私の思春期は江戸時代と共にあるのでございます。
自閉症気味の性格を心配した祖母が無理やり入れた劇団で、貧相で目が窪んでがりがりに痩せている私は、マネージャーが付くお姫様役の子役ではなく、その他一般の大部屋の子役として重宝に使われました(笑)
撮影所で過ごす時間は長く、その時代はいつも江戸であり、私の役は貧乏で食べ物もなく、美しいキモノも着せてもらえず、破れた木綿に麦飯の長屋の子供。
お針仕事の手伝いでわずかに得たお金も父の酒代に取り上げられ、弟達に食べさせる米がない・・・・そんな役ばかり長く続きました。
いまだに白米はあまり食べず、破れた着物を雑巾にまで使い倒すくせは、子供時代の環境のせいであると思います(笑)
この時代に、わずかな白米や麦や玄米に芋や野菜をいれてかさを増して食べる習慣が治らず、もういつの時代の人間かしらと、自分でも呆れてしまうのです。
ですが撮影所の皆さんが優しく指導してくださったおかげで私は自分で着物も着れて、髪も結えて、化粧もできるようになりました。
着付け師さん、床山さん、化粧師さん達にとても可愛がっていただきました。
きもの関係の仕事をしていた祖母にもいろいろ教えられました。
もうどなたも存命ではありませんが、今の私の姿を見て、きっと涙をながして喜んでいると思います(笑)