変わっていく銀座となじめない私
銀座には長年通っている店があるので、よく行くとはいえ、変化に全く対応できていないままです。
「GINNZA SIX」がオープンして人出もさらに多く、また新しい感じの銀座になりつつありますが、私は今一つ馴染めず、SIXもオープン当初一回行ったっきりです。
先日は午後からお茶の稽古でしたが、やわらかものでなく手織りの夏結城紬で。
夏結城は絹糸にわずかに麻糸を織り込んであるのでとても軽くさらっとしていています。
地色はやや生成りに少し淡い栗色が所々混ざっていて、小さな亀甲に草の模様が入っています。
とてもとても大切な着物です。
銀座で友人とお茶をするときは「とらや」さんに行くのですが、なんだか落ち着かなくて。(たぶんお店のまわりに中国の方が多いせいだと思います)
一人の時や娘と一緒の時は必ずコアビルの奥にある若松さんでお茶をします。
子供の頃からずっと通っていて、祖父母や両親と休憩するときは決まってここでした。
もう40年以上昔からになります。
椅子が小さいので、体の大きい若い方や、男性にはいささか居心地が悪いでしょう。
小柄な女性にとっては丁度良い空間です。
食が細くて、あまり食べない私でも、ここのお雑煮とあんみつは大好きで良く食べるので、祖母がいつも嬉しそうにしていました。
三越で買ってもらったワンピースをすぐ眺めたくて袋から出していたら、「お行儀の悪い子だね!お雑煮食べ終わってからにしなさい!」とえらく怒られたことも。
私は子供の頃、祖母のきものや草履の買い物についていくのが大好きでした。なぜならお店の方に必ずお菓子を頂けるからです。
綺麗な和紙にラムネとかチョコレートがつつんであり楽しみでしたね。
夏には冷えたメロンや西瓜を切ってもらったり、ケーキをご馳走になったりしたこともあります。
私が飽きないように、着物の端切れで可愛い手提げ袋を作ってくれたり、お人形さんの洋服を作ってくれたりしたお店もありました。
祖母の話があまりに長くなって、店の奥で昼寝をさせてもらったことも(笑)
女将さんがうちわでずっと扇いでくれたことを鮮明に覚えています。
あの頃はもうクーラーはあったのでしょうけど、今のように性能が良くなくて、長い時間使うとあまり冷えなくなってしまったのですよね。
そんな夢をみているような穏やかな時間が銀座には流れていて、着物を買うことは素敵なイベントみたいなものでした。
着物を買うために祖母は日々節約したり、時々お仕事したりして、生活の中心にあったのです。
流通が不透明であるとか、価格があってないようなものだとか、職人にお金が行っていないとか、無理やりなローンで逃げれないなど様々な良くない話が出ますが、そういう一部のチェーン店の悪い印象が全てではありません。
ご主人や番頭さんとのやり取り、いつか欲しいきものについての楽しい話、歌舞伎の話、銀座で美味しい店の話、私の学校の話、時には叔母が旅先の手土産をもってお店の方とお茶を飲み、別に買うわけでもなく帰ってくる日もありました。
そんなやり取りと、お店の方の確かな目と知識に対して金額を払うことに良しと思う世の中と、今のように誰とも話さずPCの画面だけを眺めて購入するきものと、どちらが良いのかはわかりません。
私も、一時期は自由な時間にネットで着物が買えたりすることを楽しいと思う時もありました。
若い方にはその方が気軽で良いのだと思います。
やがて時間がたって年齢をかさねてくると、一抹の寂しさを感じるように・・・・。
あのふんわりとした贅沢な時間の中で、美しいきものを手に取り、悩み、思い切って買う時の祖母や叔母の高揚した表情を思い出し、私は何とも殺風景な着物人生なんだろう。
そんな風に思ったりするときもあります。
ただし、あくまでプロの目をもつ呉服屋さんがいての話です。
そうでないなら、ネットの方がましかもしれません。
先日帯締めを買いに道明さんに行きましたら、辛口ではあるけど、色の相談が出来て信頼していたおじさんが退職されてしまっていました。
残念です。