松阪の桜
昨年の桜染に比べて、今年は赤みが強く出ました。
染液を少し長く置いて熟成したからでしょうか。
桜の木は松阪の鈴木さんから送って頂いたもの。
少し膨らみかけ、花が咲く前の枝と蕾の根元に赤が潜んでいます。
以前東京の街中の桜の枝で染めた時は、ベージュの暗い色にしか染まらなかったことがあります。
昨年の山桜は優しいピンクに染まりました。
松阪の桜は黄色の後に赤みが多く出て、一緒に並べた紅花の染料と変わりません。
手前が紅花の抽出液で、奥が桜です。
この色も今年だけであって、来年は違う色が出るという事もありうるのです。
毎年同じ色とは限らないのが自然の色なのでしょう。
松阪の桜がなぜこの色を出したのか、問いながら染めをするので一人での作業ですが孤独な作業ではありません。
ぐつぐつと煮える鍋に向かって対話をするように話しかけたり、また送ってくださった鈴木夫妻の優しい気持ちや、桜が咲いていた松阪の景色なども思い描きながら、その場所にワープできるのも草木染めの楽しみです。
染めをやっていると時々何が正解かわからなくなります。
私たちが見ている色はその人の目を通して優しい色に見えたり、強い色に見えたり、寂しい色に見えたりと、変化しているのだと思います。
楽しい気持ちで見る色と悲しい気持ちで見る色は同じ色でも、その時の気持ちが色にフィルターをかけ、脳に伝達されて視覚を通して目の前に表れる。
そんな気がします。
私自身が穏やかな気持ちで臨めば、染まった色は全て美しいものになります。
とはいえ常に穏やかな気持ちでいることは、今の時代一番難しいことです。
自分の気持ちのコントロールがきちんと出来る人は強いなぁとつくづく思います。
私はなかなか出来ない・・・・。
いつも先の見えない不安と戦ったり、落ち込んだり。
猫さん達がいることですごく助けられています。