長襦袢の染め変え
伝統色彩士協会では、現在ママ振袖相談会などを新宿伊勢丹で行なっています。
ママ振袖だけでなく、姉振袖、叔母振袖、祖母振袖など、いろいろな形でお持ちの振袖を生かす流れがここ最近多くなっています。
全て新しいものでなく、今あるもの、または借りれるものを生かして次に繋いでいく。
ものを大切に最後まで使い切る精神は、戦争をくぐり抜けてきた母や祖母の世代では当たり前のことでした。
使い捨ての時代は、物も人もいらなくなったら簡単に捨ててしまう良くない日本を作り上げてしまったように思います。
新しいものにこそ価値がある。
若く才能のある人にこそ価値があるという世の中は歪みを起こします。
どんな人にもそれぞれ役割があってこの世に存在するのだと思うのですが。
こんなに小さな国なのに自殺大国と言われてしまうとはどうしたことでしょう。
また断捨離をする事は大事なことでもありますが、私は物が多い生活です。
お金はなくても質の良いものを祖母や叔母から引き継いでいるという思いがあるので、日々の生活を切り詰めてもあまり惨めに思うことなく、贅沢で豊かな人生であると思っています。
お金では買えない大切なものが沢山あるのです。
何を大事にして、何を不必要と考えるかを日々しっかりと意識しないと、様々な同調圧力に負けてしまいそうです。
さて、この可愛い長襦袢。
いつか仕立てようと大事に箪笥にしまっておいたのですが、もはや着れる年齢ではなくなってしまいました。
地味な紬からチラッと覗く赤やピンクの襦袢が可愛いと思えたのは40代までで、50代に入るとくすみがあったり紫が入ったりと、落ち着いた赤を選ぶようになりました。
今回思い切って草木で染め変えることに。
長襦袢の染め変えはまず精錬から始まります。
長年の保管の汚れなどをしっかりと落とす事。
生地には糊やよくわからない薬剤がかかっているので、一旦それを全て取り除く作業です。
精錬のやり方は2種類。
灰汁で行う完全な自然精錬と、薬剤をもう少ししっかりと落とす精錬とに分けています。
絹を傷ませないように、50度〜60度で3時間じっくり精錬します
全て終わると、余計なものを洗い流した絹は軽くさっぱりとして生き返るようです。
残った液は、なんだかどんよりとしています。
それからどんな草木で染め変えていくかを考えます。
一度合成染料で染められた絹を草木で染め変えるのでどんな色になるか、予想がつかないことも多々あります。
それでも方向性はしっかりと決め、色を出していきます。
如何でしょう。
子供っぽい色使いの長襦袢を落ちついた大人の梅鼠色に。
穏やかな草木の色は、大人にこそ似合うもの。
染め上げて湯のしをせずに仕立てると、これ以上縮む事はないので自宅で洗える長襦袢になります。
4月より、日本橋三越カルチャーでの新しい講座がスタートします。
4月は桜の木で染める桜染。
5月は季節のお香の調合や、防虫剤などを作り、文様なども季節ごとに勉強します。
6月の着付けは初心者でも経験豊かな方でも満足できるようなカリキュラムを考えています。
一年を通して季節の様々なことを学んでいきます。
お申し込みお待ちしております。