枯淡の美
本塩沢に絹科布。
帯揚げは冬に椿で染めた利休鼠。
少し緑の入った鼠色です。
通年使える薄い絹に染めています。
帯締めは春夏用で青みの藍鼠。
若い時は、奇抜なこと、個性的な事、面白いことなど着物に対するチャレンジを楽しんできました。
やはりどこか目立ちたいという気持ちがあったのでしょうか。
着物を着たときに少しでも若く見えたいという葛藤の世代を通り過ぎ、今は若さでなく美しく老いることに重きを置いています。
人生の前半は頂上を目指すことで余裕もなくあっという間に過ぎてしまいましたが、今はゆっくりのんびり下山途中です。
しかし豊かな人生は実は下山に残されていて、この為に前半を生きてきたのだと思えてなりません。
いつでも着地点をしっかり決めて、そこに向かう努力さえ失わなければ人生は豊かに過ごせます。
老後の楽しみが海外旅行やグルメなどでは何か寂しいこともように思えます。
そしてその二つはコロナ禍で最も難しい事になってしまいました。
外に向かう楽しみでなく、自分を完成させる為の時間の使い方こそ下山にやらねばならぬ事でもあります。
私が常に念頭に置く事に「枯淡」という言葉があります。
「枯淡の境地」
「枯淡の美」などをよく会話に使うのですが、
「枯淡」とはあっさりしているのに、味わい深いという意味を持ちます。
世俗的な名利に囚われず、さっぱりとあっさりと生きる事。
俗っぽくない事、日本的な美を表す言葉でもあります。
そして何よりありのままである事。
私はまだ白髪染めをしているのでありのままの姿ではありませんが、やがて髪は白いままになる時が来るでしょう。
着物では、この「枯淡の美」を意識しています。
あっさりとした組み合わせで、特に何かが素晴らしく際立っているわけではないものの、全体で見ていただいた時のバランスが気持ち良いものであったらと考えています。
私より若い世代の弟子たちが育っているので、協会が発信していく個性あるコーディネートは任せることができます。
肩の荷が降りて、これはとても嬉しいことです。
皆様には、どうか協会所属の診断士のそれぞれの個性の中から好みの診断士を選んでいただき、カラー診断をお受けになることをお勧めします。
私の個人診断は、日本橋三越での特別診断とご紹介制のみとなります。
簡単な診断は年一回の紅ミュージアムにて行っています。
来月は浴衣のトークイベントが新宿伊勢丹にて開催されます。
お時間がございましたら是非お寄りくださいませ。
お待ちいたしております。