着物思想
奥順さんの100亀甲の結城紬
暖かく軽く着心地の良い紬です。
どんな帯にも合わせやすいので重宝してよく着ています。
この頃思うのですが、今の若い人に着物をそのまま着て欲しいと言うのは無理があるのだと感じています。
はっきり言って不便でしかありません。
ですので和洋折衷にファションとして取り入れるのが流行っているのだと思います。
どんなにサイズが小さくても和洋折衷であれば気にせず着用できますので、リサイクルやお下がり、アンティークの着物をそのまま着る事ができます。
20代30代の子たちの着物の取り入れ方は可愛いくて斬新で見ていて楽しいし、着物ってこんなに洋服にマッチするものだったかしら?と教えられる事もあったりします。
若い子は、流行りをキャッチしてそれに乗り、流行りが終われば降ります。
あっさりと次に行く。
それの繰り返しでもあります。
楽しむ事が大事ですのでそれで良いと思います。
何か常に人と違うワクワクする事を探し、発信し、沢山の人が同じように蠢いている場所から、自分だけはと一歩前に出たい。
誰もがそう思っています。
そういう意味では、今の若い人の着物に対する感覚は人と違う何かを発信するアイテムとして面白いという感覚なので、着物の決まり事や深い歴史などは不要であっても仕方ありません。
どんな形でも着物に興味を持っていただけた事が大変うれしい事です。
50代60代の人が一般的なごく普通の着物を着ると言うことはどう言うことなのだろうか。
それなりに決まり事や約束を守って、そこに自分を当てはめていく。
そう考えた場合、やはり自分なりの人生哲学が確立しているような人でないと難しい。
着る意味が見出せないと思うのです。
体型カバーのファションであればいくらでも洋服で探すことが出来る時代です。
若作りなら最近のファッションの方がはるかに勝者であります。
着物を着ているからと特別に気を使った対応をしてもらえることも若い時はありましたが、今の私はただのおばさんなのでありません(笑
自由な暮らしが選択できる現代において、規則や決まりごとに縛られ、あれはダメこれはダメという世界をあえて選ぶ人がいるのだろうか?
しかも、容易に洗えない、収納場所も必要で保管にも気を使う。
メンテナンスにお金がかかり、着付けにも時間がかかり、ヘアもそれなりにとなったら、もはや日常で着用するにはハードルが高すぎると思うのです。
それでも着る。
好きだから?そうでもない・・・・。
夏の暑い時期はうんざりします。
ではなぜ着るのだろう・・・・。
多分、あえていうならば思想なのだと思います。
それ以外に言葉が思いつきません。
日本という自国に対する思い、祖母や母の教えや記憶、染織りの人の仕事、草木染めの色。
それらの思想や仕事に対してリスペクトしているから着物を着ている。
それだけです。
混迷する社会、予測つかない変化の世界情勢の中で、日本人であることさえ価値がなくなってしまいそうな今、着物を着ることは最後の抵抗なのかなと。
日本人として先祖からの伝統をそのまま受け継ぎ次の世代へ渡す。
着物を着るということだけで、その使命は果たせていると思います。
着物はただそのまま着るだけで美しい。
そこは私が一番大切に思っている部分です。
吉田雪乃の着物サロン
4月より第3金曜日 日本橋三越カルチャー茶室にて開講いたします。
月一回お着物を着て皆さんと着付けや色やコーディネートなどをお勉強する会となります。